第2回 全国高校生英語ディベート大会
大会ルール
2007年12月8日 改定
全国高校生英語ディベート大会では,多くの地域から,異なったディベート経験をしてきた高校生が集い,共通の土俵で競い合います。この大会ルールの目的は,最低限の共通の土台を設けることで,できるだけ公平で,教育的にも意味があり,何よりも楽しいディベート大会を実現することにあります。
大会運営上の規定なども含みますので,すべてを読み通す必要はありませんが,重要性の高い項目には四角の枠で囲みましたので,出場者の高校生の皆さんと,ジャッジ・顧問の先生は関連しそうな箇所を,試合前に一度目を通してください。*ルール本文後のアステリスク付きの部分は,各項目の解説ですので必要に応じ目を通してください。
この大会ルールはあくまでディベートを行う上での最低限の取り決めにすぎません。ルールに定めがないからと言って,それ以外は何をやっても良いという訳ではありません。高校生にふさわしくない行為はもちろん行うべきではありませんし,フェア・プレーの精神に違反してはならないということを忘れないでください。
この大会を実行する上で,このルールに定めのない例外的な事態についての決定は,大会審査・実行委員会が最終的に責任を負うことにします。そうした決定を行った場合,必ず出来るだけ早時期に全参加者に発表します。
1. 大会
1.1 予選
1.2 本選
1.3 褒賞
1.4 チームと参加制限
2. 試合
2.1 スピーチ
2.2 試合運営
3. 証拠資料
3.1 証拠資料の定義
3.2 証拠資料の試合中での利用
4 ジャッジと試合判定
4.1 ジャッジのスピーチ中の試合指揮
4.2 判定
4.3 コミュニケーション・ポイントの採点
1. 大会
この大会では,最大64のチームにより4試合の予選を行った後,以下の基準に従い,8チームの予選通過校を選ぶことにします。その後,その8チームにより,準々決勝・準決勝・決勝とトーナメント方式での本選を行い,入賞者を決めます。
1.1 予選
各チームは,肯定・否定側ディベートを,原則としてそれぞれ2試合ずつ行います(ただし不戦勝の試合などがある場合は例外とします)。
1.1.1 予選運営方法
原則として同じチームとは2回あたらないようにします。原則として同じ学校同士も対戦しないようにします。
予選1・2試合目の対戦相手は,クジにより大会運営者が決定します。3・4試合目はその前の試合までの順位を元に,原則として同じ勝ち数同士が対戦する方式であるパワー・ペアリングで対戦相手を決定します。パワー・ペアリングにあたっては,いわゆる「ハイ・ロー原則」を採用します(同じ勝ち数をあげているチーム集合の中では,順位の上位のチームが,できるだけ下位のチームと対戦する原則)。
*パワー・ペアリングは偶然の組み合わせの良さで勝つチームをでにくくする方式です。また全勝や全敗チームをできるだけ減らし,極端な実力差の対戦を減らす効果も期待されます。米国や日本の大学ディベートなどで広く採用されている方式です。技術的な詳細は別文書などでご確認下さい。
肯定・否定を同数にする基準や,同校対戦・同チーム対戦をふせぐ基準を優先して対戦チームを決めます。必ずしも同じ勝数のチームと対戦しない場合も,希に生じます。
1.1.2 予選通過基準
大会の予選通過チームは,以下の基準にしたがって全体の順位を決め,上位8チームとします。
第1基準 勝ち数(不戦勝も含む)の多いチームは,順位が上となる
第2基準 同じ勝ち数の場合,不戦勝・不戦敗を除く各試合の平均投票数(各試合でそのチームを勝ちとしたジャッジの票数)が多いチームの順位が上となる
第3基準 勝ち数・平均投票数も同じ場合,不戦勝を除く各試合の平均コミュニケーション点が高いチームの順位が上となる
第4基準 勝ち数・平均投票数・平均コミュニケーション点も同じ場合,不戦勝を除く各試合でそのチームに所属するディベーターがベスト・ディベーター候補を獲得した数の平均が多いチームの順位が上となる
第5基準 以上の条件の全てが同率の場合,審査委員の立ち会いの下,該当するチームの代表同士のじゃんけん(一回勝負)により,勝者が予選通過チームとする。
1.1.3 予選への遅刻・欠場
体調不良や交通事情などによるやむを得ない遅刻以外は,予選参加を認めません。やむを得ない遅刻の場合,他の試合の進行具合とのかねあいを考え,大会運営者の判断で一試合(あるいは二試合)だけ不戦敗とするか,それとも遅延しての開始を認めるかを判断することにします。
1.1.4 予選の途中棄権の禁止
体調不良や交通事情などのやむを得ない事情の場合以外は,予選試合の棄権は認められません。原則として途中で予選を棄権した場合,本戦への通過も放棄したとみなします。 *予選の棄権は,対戦相手のチームの試合機会を奪うことになりますし,本選での通過順位を操作するための欠場もありえるので,基本的に認められません。
1.1.5 予選通過チーム決定の例外
予選試合終了後,体調不良や交通事情などのやむを得ない事情で,本選の対戦発表までにチームの棄権があった場合,本選への通過チームは棄権チームを除く上位8チームにて決定することにします。
また参加資格の虚偽申告や,証拠資料の不正などの甚だしいルール違反や,甚だしくフェアプレー精神に反したり高校生にふさわしくない言動があったりしたと審査委員が判断した場合などには,予選通過対象チームから外すこともありえます。
1.2 本選
予選を通過した8チームにより,準々決勝・準決勝・決勝とトーナメント方式(一度負けたらそこで敗退する方式)で入賞者を決めます。
1.2.1 本選運営方法
予選通過した8チームは通過した順位に従い,以下の表のように対戦することにします。
予選1位
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3位
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8位
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準決勝
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決勝
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6位
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準々決勝
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5位
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7位
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準決勝
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4位
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準々決勝
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2位
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この場合,同じ学校のチーム同士も対戦を行うもことにし,予選で一度対戦したことのあるチーム同士も対戦することにします。なお本選では肯定・否定のどちらでディベートするかはクジで決定します。
決勝で負けたチームが準優勝となります。準決勝で負けた2チームは,両チームとも3位とし,3位決定戦は行いません。
1.2.2 本選における棄権
本選に入ってからの棄権は原則として認められません。本選の対戦の発表後に例外的に棄権チームが出た場合にも,対戦枠の変更や予選通過8チーム以外からの繰り上げなどは一切行わず,棄権チームの対戦予定チームが不戦勝ということで本選を進めることにします。
*本選は,多くの学校にとって試合を観戦するという学習の機会でもあります。同じ学校のチーム同士が対戦する場合にも,体調不良などの特段の理由がない限り棄権は認められません。
1.3 褒賞
この大会では以上のように決定される優勝・準優勝・三位(二チーム)チームへの褒賞の他,個人賞であるベスト・ディベーター賞その他を設け,褒賞することにします。
1.3.1 ベスト・ディベーター賞
この大会では個人賞としていくつかのベスト・ディベーター賞を贈ることにします。
予選各試合および本戦の各試合で,各ジャッジは,その試合で最もよい働きをしたディベーター1名を選び,ベスト・ディベーター候補として(他のジャッジとは独立して)投票することにします。その際,試合では敗者となったチームから選ぶこともありえます。チームの他のメンバーと連携のないスタンド・プレイヤーは候補として選ばず,チームに最も貢献する働きをしたディベーターから候補を選ぶことにします。
最終的に,予選通過したチームの中で,予選から通算し,ジャッジの投票を最も多く獲得した個人を,順に表彰することにします。
1.3.2 特別賞
大会実行委員会や大会審査員の判断で,特別賞などを授与することもあり得ます。その場合,必ずしも大会成績などを重視した賞でないこともあり得ますが,褒賞にあたっては必ずその受賞理由を述べることにします。
1.4 チームと参加制限
この大会の予選および本選では,同一の日本の高等学校または高等専門学校の3年までに在学中の生徒からなるチームを単位に,ディベート競技を行うものとします。一つの学校が,複数のチームを出場することは,実行委員会が事前に認めた場合に認めます。その場合,各学校の出場機会が公平になるよう条件を定め事前に通達するものとします。
1.4.1 チームの構成とその制限
一つのチームには3名以上,5名まで登録可能とします。ただし各チームに登録できるメンバーには以下の制限があります。
・英語のネイティブスピーカーの生徒の参加は禁止されます。
・以下の条件に該当する生徒は,チームに2名まで登録が制限されます。
(1)英語を第1言語とする国で10ヶ月以上滞在経験のある生徒
(2)英語を第2言語とする国の出身である生徒
(3)家庭で常用的に英語を使っている生徒
*例えば留学生であっても,英語圏からの留学生でないならネイティブ・スピーカー扱いとする必要はありません。
1.4.2 チームの試合出場メンバーとその制限
各試合への出場は登録メンバーのうち,3人か4人までとします。ただし以下の条件に該当する生徒は,各試合に1名までしか出場できません。
(1)英語を第1言語とする国で10ヶ月以上滞在経験のある生徒
(2)英語を第2言語とする国の出身である生徒
(3)家庭で常用的に英語を使っている生徒
試合ごとにメンバーを入れ替えることは許されています。が,試合開始後に補欠メンバーが途中で入れ替わることは許されません。
1.4.3 チーム・メンバーの変更の禁止
原則として,予選参加チームが確定した後のメンバー変更は一切禁止されます。また複数チーム出場している学校も,チーム間の移動は禁止となっています。 *大会開始後は,たとえ同じ学校のチームであろうとも,予選敗退したメンバーを別の予選通過チームに合流させるなどのことは一切禁止されます。
1.4.4 参加資格に関する罰則
1.4.1から1.4.3の規定に違反することが,大会中に判明し,故意などであり悪質であると判断された場合,そのチームの行った試合はすべて不戦敗とし,以下の大会での試合をすべて放棄するとともに,予選通過資格も喪失するものとします。また大会後に判明した場合も,賞の返還等を求めることになります。
2. 試合
本選および予選の各試合は,事前に定められた論題をめぐり,以下に定めるフォーマットに従い進めることとします。
2007年度の論題
All elementary and secondary schools in Japan should have classes on Saturdays. 「日本のすべての小・中・高等学校は、週6日制にすべきである。是か非か。」
付記事項
①この論題では,平日の五日間に加え,土曜日は(休暇期間を除き)原則として毎週授業を行うことの是非を論ずること(隔週に土曜を開校したり,水曜を土曜にうつすなどのプランは認められない)
②また全学の児童・生徒を対象にして是非を論ずること(一部の児童・生徒を対象に土曜授業を行うプランなどは認められない)
1. The debate should be on whether there should be classes on every Saturdays (except the holidays) in addition to the regular five weekdays. (To advocate biweekly Saturday classes or moving
Wednesday classes to Saturdays, for example, are not allowed.)
2. Moreover, it should be debated on whether every pupils/students should in principle attend to Saturday classes. (To advocate special Saturday classes for limited students, for example, are not
allowed)
2.1 スピーチ
各試合では,大会の論題について,以下の12のスピーチを順に行うものとします。各チームの選手は,以下に指針を定めるそれぞれのスピーチの役割に沿い,できるだけ議論をかみ合わせ,分かりやすくスピーチするよう努力することとします。
スピーチ
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時間
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①肯定 立論 Affirmative Constructive Speech
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4 分
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準備時間 Preparation Time
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1 分
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②否定 質疑 Questions from the Negative
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3 分
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③否定 立論 Negative Constructive Speech
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4 分
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準備時間 Preparation Time
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1 分
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④肯定 質疑 Questions from the Affirmative
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3 分
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準備時間 Preparation Time
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2 分
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⑤否定 アタック Negative Attack
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2 分
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⑥肯定 質疑 Questions from the Affirmative
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2 分
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⑦肯定 アタック Affirmative Attack
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2 分
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⑧否定 質疑 Questions from the Negative
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2 分
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準備時間 Preparation Time
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2 分
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⑨肯定 ディフェンス Affirmative Defense
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2 分
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⑩否定 ディフェンス Negative Defense
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2 分
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準備時間 Preparation Time
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2 分
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⑪肯定 総括 Affirmative Summary
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2 分
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⑫否定 総括 Negative Summary
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2 分
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計
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38 分
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*なお以下は最低限の指針にすぎません。分かりやすく説得力のある,そして高校生らしいユニークな議論を展開してください。
2.1.1 肯定立論①
肯定立論では,肯定側の基本的な主張を述べ,論題がなぜ肯定されるかということを証明するために,論題を明確に定義づけるプランを提案し,証拠資料などを使いながらAdvantage(利点・メリット)を証明することとします。
2.1.1.1 肯定側プラン
大会論題をどう定義し,具体的な政策として提案するかを,「プラン」Planと言います。肯定立論ではプランを必ず読んでください。
立論以降は,プランを変更したり,追加したりすることは禁止されます。
万が一,プランが立論にない場合,肯定側は論題に定められた最低限のプランを行う曖昧な立場だとジャッジは解釈することとします。
*これを立論の冒頭で明確に述べることで,ジャッジも対戦相手も明確に肯定側チームの主張が分かります。またAdvantageが得られるのかを具体的に証明しやすくなります。例えば「土曜に何時間,何の授業を追加するのか」などは最低限述べてください。また高度な使い方としては,例えば「教員個々の受け持ち授業数は増やさない」などのプランをいれれば,相手から指摘されたDisadvantageに反論しやすくもなります。
2.1.1.2 論題と関係のないプランの禁止
肯定側は,論題とは関係のないプランを述べることは禁止します。あまりに論題と関係のないプランが提案された場合,ジャッジは,そうした無関係な提案から生じるAdvantageを無視することにします。 *例えば,「教員を増やして,20人学級を実現しよう」と提案することは,「土曜授業」とは直接の関係はありませんので言及しないでください。
2.1.1.3 Advantage数の制限と,Advantageの証明
Advantageの数は,最大で二つとします。
Advantageを確実に証明するためには,(A)プランがない状態(present situation)が望ましくないこと,それに対し(B)プランの効果(effect)によってAdvantageが得られると予想されること,この(C)Advantageに客観的に重要な価値があること(importance)の,三つの論点を証拠付きで示すことが求められます。
なおAdvantageの中に二つ以上のかなり異なった事柄がまざっているような場合は,別のAdvantageに分けてください。見かけは二つでも,それを越える数のAdvantageが入っている場合は,ジャッジは主要な二つ以外は無視することにします。
*これは,できるだけささいな論点を省き,確実な証明のある議論を行うための制限です。
英語の表現としては,(A)現状分析analysis of the present situation,または「inherency内因性」「necessity必要性」などもあり得ます。(B)プランの効果については, effectの他にも,「solvency解決性」や「process発生過程」などの用語もあり得ます。(C)重要性importanceでは,significance,
impactなどの用語も使われます。いずれにせよ三つの論点を示すことが強く奨励されます。
2.1.2 否定立論③
否定立論では,論題がなぜ否定されるべきかということを証明するために,否定側の基本方針を述べ,Disadvantage(弊害・デメリット)を証明することが最も重要な役割となります。
2.1.2.1 Disadvantage数の制限と,Disadvantageの証明
Disadvantageの数は,最大で二つとします。
Disadvantageを確実に証明するためには,(A)プランがない状態(present situation)が望ましいこと,それに対し(B)プランの効果(effect)によってDisadvantageがもたらされると予想されること,この(C) Disadvantageに客観的な価値があること(importance)の,三つの論点を証拠付きで示すことが求められます。
なおDisadvantageの中に二つ以上のかなり異なった事柄がまざっているような場合は,別のDisadvantageに分けてください。見かけは二つ以内でも,それを越えるDisadvantageが入っている場合は,ジャッジは主要な二つ以外は無視することにします。
*これは,できるだけささいな論点を省き,確実な証明のある議論を行うための制限です
英語の表現としては,(A)現状分析analysis of the present situation,または「uniqueness固有性」などの言葉を使うこともあり得ます。(B)プランの効果については, effectの他にも,「link因果連鎖」や「process発生過程」などの用語もあり得ます。(C)重要性importanceは,significance,
impactなどの用語も使われます。いずれにせよ三つの論点を示すことが強く奨励されます。
2.1.2.2 否定立論と否定アタックとの分業
否定立論では,できるだけ論題・プランから生じるDisadvantageの証明に時間を使ってください。どうしても立論での時間が余ってしまった場合などにのみ,こうした肯定側Advantageの証明の不備を攻撃するような「アタック」が許されます。
*「プランからAdvantageが生じない」あるいは「プランは必要ない」という種類の議論は,否定アタックの担当者で行うべき事柄です。立論以外ではDisadvantageを論じることはできません。Disadvantageを論じる方が,否定として強いだけでなく,アタック担当者と分業を行いえて有効に時間を使えます。
2.1.3 否定アタック⑤
否定アタックでは,肯定チームが立論で述べたAdvantageの証明の問題点を攻撃することが役割となります。例えば(A)プランがない状態でもAdvantageは得られ,プランは必要ないという攻撃(not necessary)や,(B)プランからAdvantageが得られるという効果は予想できないという攻撃(no
effect)や,(C)Advantageには客観的な価値がないという攻撃(not important)などがこれに該当します。
ここで新たにDisadvantageにあたるものを追加することは禁止します。もし新しいDisadvantageが提出された場合,ジャッジはそれを「新しい議論」と判断して無視することにします。
*アタックとDisadvantageとが紛らわしい場合もあるでしょうが,例えばこの論題では,「土曜授業には莫大なコストがかかる」という主張は,実際にはDisadvantageで禁止されます。しかし「莫大なコストがかかる関係で,実際には,良い教員が手当てできない」というのはアタックとしては許されます。
2.1.4 肯定アタック⑦
肯定アタックでは,否定チームが立論で述べたDisadvantageの証明の問題点を攻撃することが主要な役割となります。例えば(A)プランがない状態でもDisadvantageは発生してしまうという攻撃(not unique)や,(B)プランが効果としてDisadvantageが発生させるというとは予想されないという攻撃(no
effect)や,(C)Disadvantageに客観的な価値がないという攻撃(not important)などがこれに該当します。
直前に行われた否定アタックへの再反論を行うことは禁止します。それらは,この直後のディフェンスで行ってください。もし明らかに否定アタックへの再反論を先走って行っている場合は,ジャッジは無視することにします。なお例外的に,否定立論でアタックに該当するものが議論されていた場合には,ここで反論を加えることは許されます。
ここで新たにAdvantageにあたるものを追加することは禁止します。もし明らかに新しいAdvantageが提出された場合,ジャッジはそれを「新しい議論」と判断して無視することにします。
2.1.5 肯定ディフェンス⑨
肯定ディフェンスでは,否定アタックでの反論に対してディフェンス(再反論)しながら,肯定立論で提案したプランからAdvantageが発生するということを証明しなおすこと(再構築)が役割です。
ここでは防御的なスピーチしか行ってはなりません。つまり肯定立論で論じたAdvantageへの否定側のアタックが無効であるということを論じることが原則ですが,相手からなんのアタックもこなかったAdvantageについて説明し直し,強調することは当然許されます。
新しいプランや新しいAdvantageに相当するものをここで追加することは許されません。また否定立論への新しいアタックを出すことも許されません。もし追加Advantageやアタック的な議論が行われた場合,ジャッジはそれらを「新しい議論」と判断して無視することにします。
ただし肯定ディフェンスでは,相手側に直接アタックを付け加えるのでないならば,今までの議論の比較をする観点を出すことは,許されます。
*例えば,否定立論でのDisadvantageの重要性よりも,肯定立論のAdvantageの重要性の方が上回るという主張をすることは,相手の重要性そのものを攻撃している訳ではなくアタックではないので許されます。しかも有効な比較となっております。いわば守ることに主眼を置いた間接的な攻めであり,総括につながるので推奨されます。
2.1.6 否定ディフェンス⑩
否定ディフェンスでは,肯定アタックでの反論に対してディフェンス(再反論)しながら,否定立論で論じたDisadvantageが発生するということを証明しなおすこと(再構築)が役割です。
ここでは防御的なスピーチしか行ってはなりません。つまり否定立論で論じたDisadvantageへの肯定側のアタックが無効であるということを論じることが原則ですが,相手からなんのアタックもこなかったDisadvantageについて説明し直し,強調することは当然許されます。
新しいDisadvantageに相当するものをここで追加することは許されません。また肯定立論への新しいアタックを出すことも許されませんし,直前の肯定ディフェンスへの再々反論も許されません。もしそうした議論が行われた場合,ジャッジはそれらを「新しい議論」と判断して無視することにします。
ただし否定ディフェンスでも,相手側に直接アタックを付け加えるのでないならば,今までの議論の比較をする観点を出すことは,許されます。 *直前の肯定側ディフェンスへの攻撃は,ここではなく肯定総括で行ってください。
肯定ディフェンス同様,例えば肯定立論でのAdvantageの重要性よりも,否定立論のDisadvantageの重要性の方が上回るという主張をすることは,相手の重要性そのものを攻撃している訳ではなくアタックではないですが,比較となっております。いわば守ることに主眼を置いた間接的な攻めであり,総括につながるので許容されます。
2.1.7 肯定総括⑪
肯定総括では,試合中に提出された1) 否定側のDisadvantageと,2) 肯定側のAdvantageの双方について,反論・再反論も含めて要約を行い,それらを3) 総合し比較comparisonし,肯定側の論点が上回ることを論じることが役割です。
ここでも新しいプランや新しいAdvantageに相当するものを追加することは許されません。また否定立論への新しいアタックを出すことも許されません。もしそうした議論が行われた場合,ジャッジはそれらを「新しい議論」と判断して無視することにします。
ただし細かい証拠比較(たとえば否定ディフェンスへの再々反論にあたる点)や,試合全体の比較に関わる大きな視点から比較の観点を出すことは許されます。
*例えばDisadvantageよりも,なぜAdvantageの方が上回るかという価値比較基準についての主張は重要な比較であり,むしろ積極的に奨励されます。
肯定アタックで,攻撃できなかったDisadvantageへのアタックは許されませんが,「相手の議論を認めたとしても,私たちのAdvantageには劣る」というような比較は許されます。
2.1.8 否定総括⑫
否定総括では,試合中に提出された1) 肯定側のAdvantageと,2) 否定側のDisadvantageの双方について反論・再反論も含めて要約を行い,それらを3) 総合し比較comparisonし,否定側の論点が上回ることを論じることが役割です。
ここでも新しいDisadvantageに相当するものを追加することは許されません。また肯定立論への新しいアタックを出すことも許されません。もしそうした議論が行われた場合,ジャッジはそれらを「新しい議論」と判断して無視することにします。
ただし細かい証拠比較(たとえば肯定ディフェンスへの再々反論にあたる点)や,試合全体の比較に関わる大きな視点から比較の観点を出すことは許されます。
*例えばAdvantageよりも,なぜDisadvantageの方が上回るかという価値比較基準についての主張は重要であり,むしろ積極的に奨励されます。
否定アタックで,攻撃できなかったAdvantageへのアタックは許されませんが,「相手の議論を認めたとしても,私たちのDisadvantageには劣る」というような比較は許されます。
2.1.9 質疑応答②④⑥⑧
質疑応答は,質問する側のチームが進行について決定することにします。つまり応答側の答えがあまりに時間がかかっている場合や的はずれな答えである場合などは,答えをさえぎり次の質問にいくことが許されます。
質疑応答の際には,双方ともにお互いに対してできるだけ誠実に,できるだけ多くの質疑が行われるようにスピーディに応答することを努力してください。
アタックの後の質疑(⑥・⑧)では,原則として,相手側の行ったアタックについての質問を行ってください。ただし話が相手側の立論との矛盾などに関連する場合などでは,相手の立論について聞くことも許します。
*相手の答えをさえぎったり,答えを待たずに次の質問肉場合には,相手に失礼にならないような表現を用いて断ってからにしてください。
例えば,答えの途中なら“Thank you for your answer. But I must ask another question.”などと丁寧に遮ってください。また沈黙が続く場合にも,
2.2 試合運営
以下の担当表に記入されたスピーチ担当者が,タイム・キーパーからの合図に従い,定められた時間のスピーチを一人で行ってください(A1からA4は肯定側のそれぞれのディベーター,同様にN1からN4は否定側の担当者を表します)。スピーチの担当者は,肯定か否定か,三人チームであるか四人チームであるかによって異なります。
なお間違ったスピーカーがスピーチ・質問・解答を行った場合は,メイン・ジャッジがスピーチのやり直しを求めます。ただし次のスピーチが終わるなどした後で間違いが判明した場合は,反則があったということで不戦敗扱いとします。
肯定
三人
チーム
|
肯定
四人
チーム
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スピーチ
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否定
三人
チーム
|
否定
四人
チーム
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A1
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A1
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①肯定 立論
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-
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-
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A1
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A1
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②否定 質疑
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N2
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N4
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-
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-
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③否定 立論
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N1
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N1
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A2
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A4
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④肯定 質疑
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N1
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N1
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-
|
-
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⑤否定 アタック
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N2
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N2
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A3
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A3
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⑥肯定 質疑
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N2
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N2
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A2
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A2
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⑦肯定 アタック
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-
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-
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A2
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A2
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⑧否定 質疑
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N3
|
N3
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A3
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A3
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⑨肯定 ディフェンス
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-
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-
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-
|
-
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⑩否定 ディフェンス
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N3
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N3
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A1
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A4
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⑪肯定 総括
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-
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-
|
-
|
-
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⑫否定 総括
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N1
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N4
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*例えば四人チームの肯定側なら,最初に話すA1の人が,①と②を担当します。三人チームの否定側なら,最初に質問するN2の人が,⑤と⑥も担当することになります。
ディベーターだけでなく,ジャッジもタイム・キーパーもみんなで注意してスピーチ順番の間違いが無いように努めましょう。
2.2.1 スピーチを行う場所
各チームは,ジャッジからみて左側に肯定側,右側に否定側となるような定位置に席につくものとします。各スピーチの担当者は,基本的にチームの定位置の席にて起立して行ってください。やむを得ない事情のある場合を除き,スピーチ中はずっと起立して行ってください(質疑応答の質問者も含む)。ただし本選の決勝戦や準決勝戦や,特殊な形状の教室が会場となっている場合には,大会運営者・ジャッジの指示などに従って(演壇などで)スピーチを行ってください。
なおジェスチャーやプレゼンテーションの関係で,ジャッジや相手チームの方に歩み寄るなどの仕草をすることは,多少であれば問題ありません。
2.2.2 時間の計測
スピーチ時間は,原則としてタイム・キーパーのタイマーで計測した時間を基準とすることにし,ディベーターのタイマーなどには従わないものとします。万が一,タイマーの故障・誤操作等でスピーチ時間の計測に明らかに問題があったと考えられる場合には,メイン・ジャッジの判断で,ディベーターのタイマーを参照とします。それも不可能な場合には,メイン・ジャッジの判断で,公平性が確保され,どちらかのチームが不利にならないように,スピーチ時間の延長などを行うことにします。
2.2.3 スピーチ時間の終了
スピーチ時間の途中でたとえディベーターが発言を終了しても,タイマーを途中で終了させず,必ず定められたスピーチ時間の終了を待って,スピーチの終了とします。
定められたスピーチ時間を終了した時点で,発言している最後の文を終えることは許されます。ただしその場合にも,終了後10秒を越えて発言することは一切許されません。その後に行われた発言をジャッジは一切無視することにします。
*質疑応答の時間も同じです。タイマーが鳴った後は,質問の答え(応答)を一切待たないで,スピーチを終了とし,次のスピーチに進んでください。
2.2.4 スピーチ中の交代の禁止
各スピーチはあらかじめ届け出たディベーターが一人で最後まで行ってください。途中で交代することも,他のチームメートと共同で行うことも許されません。
2.2.5 チーム内でのメッセージ伝達
スピーチ中のディベーターに対して,チームメートが助言をすることは許されます。ただし助言は書かれたメモで行うか,ジャッジや相手チームに聞こえないような小声で伝えるものとします。大きな声で助言などが行われた場合は,コミュニケーション点の減点の対象とします。
なお試合中(準備時間も含む)に助言を行えるのは,試合に出場しているチームメートのみです。同一チームであっても,出場していない補欠メンバーからの助言も,試合中は禁止とします。観客席などから助言や資料・メモなどが差し出された場合,それまでの試合進行にかかわらず原則として無得点の敗北扱いにし,相手チームを不戦勝とします。
2.2.6 準備時間
準備時間の途中でスピーチを開始することは許されません。必ず,スピーチ開始の合図の後,各スピーチを始めるものとします。
なお準備時間中の打ち合わせは,その直後にスピーチを行うチームだけでなく,両チームとも相談の打ち合わせを行うことができます。
2.2.7 試合終了後のアピール・抗議の原則禁止
試合の終了後は,試合内容についてジャッジに訴えることは一切禁止とします。最終スピーチで,新しい議論などがあったと考える場合でも同様です。著しい抗議などがあった場合,予選通過資格・ベストディベーター資格の喪失・今後の大会への出場禁止などの処罰の対象とします(罰にあたっては,審査委員が,チームや顧問の弁明を聞いた上で審査し,書面等で公開します)。
チームは,①相手チームが明らかに参加資格を違反して出場したと考えられる場合,②相手チームが証拠資資料(3.参照)について不正を行ったと考える証拠があるとき,あるいは③ジャッジが著しく不公正な試合運営などを行ったと考える場合のみ,大会本部に抗議を行ってください。
*ディベートでは,ジャッジにどう伝わったかで判定するため,負けになったということはどこかで伝え方が問題だったと言うことを意味します(自分のチームの議論が伝わらなかった場合には,何故伝わらなかったかを謙虚に考えるべきです)。
単に負けた理由が納得いかないなどの理由での大会本部への抗議は避けて下さい。
3. 証拠資料
この大会では,各チームは,議論をする際に単に主観的な意見を言い合うのではなく,適切な証拠を分かりやすく提示することが求められます。当然のことながらディベートで利用する証拠資料の改変やねつ造などは許されません。
3.1 証拠資料の定義
証拠資料を引用することは,客観的な根拠によって裏付けられた議論をするためには,きわめて効果的です。この大会でも,特に立論などにおいて,良い証拠資料を適切に用いることが求められます。
もちろん証拠資料を引用しているかいなかだけで,試合の勝ち負けが決まるわけではありません。自分たちの議論を効果的に証明するための具体例などは,引用なしでも挙げられる場合もあります。また資料を引用したとしても,質の低い資料の場合,効果はありません。
*例えば,大衆週刊誌などの記事,素人による単なるブログやネット書き込み,単なる評論家の意見や,専門家であっても畑違いの分野などについての意見などは,単なる主観的な(自分勝手な)意見にすぎず,客観的な証拠にはならないケースがほとんどです。
3.1.1 証拠資料の種類
証拠資料としては,①客観的な事実データ(統計や法令など)を含む証拠資料の使用が奨励されます。②権威のある専門家による証言・分析や,③新聞記事や信頼できる通信社のニュースなども用いることができます。
3.1.2 証拠資料についての禁止事項
自分に都合の良いように証拠資料を捏造したり,英訳をする際に原文を歪曲したりすることは厳禁とします。もしそうした違反行為が試合中や試合後に発覚した場合,その試合は無得点敗北になるだけでなく,予選通過資格・ベストディベーター資格の喪失,また賞の取り消しなどの処罰を行います。
こうした行為を,学校として組織的に行ったことが判明したなど悪質な場合には,来年度の大会への出場禁止などのさらに厳しい措置を行うこともあります(罰にあたっては,審査委員が,チームや顧問の弁明を聞いた上で審査し,書面等で公開します)。
とりわけ専門家の証言を用いる場合などは,その専門家の意図をねじ曲げることは許されません。
*例えば「○○は××だ,という意見がある,しかしこれは~だから間違いだ」ということを専門家が本で述べているのを見つけて,「○○は××だ」という部分だけ引用してあとを省略すると,専門家の本当に言いたかったことをねじ曲げることになります。そのような省略や要約は厳禁です。*捏造とは,存在しないものをさもあるように見せかけることです。歪曲distortionとは,筆者の述べていることの途中を取り出したり,言い換えたりすることで都合の良いようにねじ曲げることです。ともにディベートや議論を学ぶものとして絶対にやってはいけない行為です。
3.1.2.1 証拠資料の英訳
日本語の資料を引用する場合には,英語に訳してから用いてください。その場合,できる限り原文に忠実な英訳になるように注意してください。日本語の文章を要約して引用する場合も,著者の結論や事実をねじ曲げないように細心の注意を払ってください。原文のねじ曲げや,原文を大げさに翻訳・要約した場合には,不正使用となり反則扱いとします。
3.1.3 証拠資料の記録の義務,保存・持ち運びの奨励
引用やグラフ・図表を使った場合には,その引用やデータが記された書籍や雑誌などの出所が分かるように,①雑誌・書籍名,②出版の日時,③ページを余白などに記録しておいてください。
できるかぎり引用箇所のページのコピー(インターネットの場合印刷したもの)を大会会場に持ってきて,対戦相手やジャッジに試合中・試合後に求められたら見せられるようにしてください。原文を見せられない・忘れた場合には,その場で対戦相手とジャッジに謝罪してください。
なおインターネット資料の場合,データが入れ替わることもあるので,必ずアドレス・日時をメモしてください。また,できるかぎりプリントアウトして持ち運びして,求められたときに相手に見せられるようにしておいてください。
*これは証拠資料に対する分析力(media literacy)を向上させるためにも,証拠資料の不正を防止するためにも必要ですので,できるだけ行ってください。
3.2 証拠資料の試合中での利用
ディベートのスピーチ中は,証拠資料の参照にあたって,その出典を明示するとともに,わかりやすく内容を伝えるようにすることが求められます。また相手チームが証拠を自由に閲覧できるようにしなくてはなりません。 *この大会は,マス・メディアなどの様々な情報源からの発信を鵜呑みにせず客観的に情報を分析する能力であるメディア・リテラシー(media
literacy)を向上させるための場でもあります。正しいメディア・リテラシーを身につけるためにも,以下の規定を徹底してください
3.2.1 引用する際に必ず述べるべきことがら
引用する前には,資料の種類に合わせて,次のことがらを口頭で述べてください。
①事実・統計データについては以下の二つ
a) 統計や事実の出典(白書・官庁統計,ホームページ,法律の名称など)
b) 統計や法令の年度
②専門家による証言・分析については以下の二つ
a) 専門家の氏名
b) 肩書き・権威(例,「経済学の教授で○○の分野の第一人者」など,何故その人のいうことが信頼できるか)
③新聞記事やニュースについては以下の二つ
a) 新聞社や通信社の名前
b) 日付
引用にあたっては,原文を一語一句抜かさない全文引用(direct quotation)である必要はありません。原文データを変えない,原文の意図を正確に捉えている限りは,適宜要約しても構いません *もっとも,全文引用した方が,たいていの場合説得力はあがります。また一句を抜かすことで,証拠の意味が変わる場合などの省略は許されません。不正使用となり反則です。
3.2.2 グラフや表などのプレゼンテーション
この大会では,オーラル・コミュニケーションをすること,つまり口で説明することが原則ですが,証拠資料をグラフや表などの分かりやすい形にして,視覚に訴えるかたちで補助的に利用することも許されます。その場合,図やグラフは大きめに書き,ジャッジ全員と対戦相手,観客に見えるようにしてください。
図表で示したことは,基本的には全て読み上げることが求められます。ビデオの上映やテープの再生は認められません。
*大きな部屋などでは特にそうですが,図表が見えなくても話し言葉だけで十分中身が分かるようなスピーチにしなくてはなりません。
3.2.3 相手チームによる証拠資料の閲覧(取り調べ)
試合中に引用した文章やチャート(および英訳された資料については,その原文について),相手チームは,必要な限り自分のスピーチ前の準備時間中に借りて閲覧し,詳しくチェック(証拠取り調べ)することができます。
ただしスピーチ直前など,相手の準備の妨害になるような形で資料を借りることは許されません。また借りた証拠資料は,準備時間・スピーチが終わったら速やかに返却し,相手チームの不利益にならないようにするものとします。
*ディベートにおいて学んで欲しいことに,資料を鵜呑みにしない批判力があります。そのためにも是非,引用資料は,相互に快く貸し借りをしてください。
4. ジャッジと試合判定
ジャッジは,双方のチームの議論の内容を公平に・客観的に比較し,最終的に論題が肯定されたか否定されたかを合理的に判断して,試合の勝敗を判定することにします。
勝敗の他,ジャッジ(とりわけメイン・ジャッジ)は試合進行にも責任を持ち,試合指揮も適宜行うことにします。
4.1 ジャッジのスピーチ中の試合指揮
ジャッジ(とりわけメイン・ジャッジ)は,試合の単なる進行以外にも,教育的な観点から必要最低限の試合指揮を行うことにします。以下に該当するケースでは,スピーチを途中でさえぎってでも当事者を注意することにします。
①スピーチ伝達上の問題がある場合:スピーチがあまりに小さい声で行われている,もしくは高校生が理解できる通常の英語会話スピードをはるかに上回るスピードでスピーチが行われている場合。
②質疑の進行に問題がある場合:質疑が質問形式でなく,延々とスピーチになっている場合。質疑が攻撃的になっている時。応答側が,明らかに答えを引き延ばそうとしているとき,あるいは,あまりに質問がないときなど。
③静寂性の確保の上で問題がある場合:スピーチ中に私語や,異音(よくあるのはボールペンのカチャカチャ音)を発している生徒・観客がいる場合。試合場周辺の物音がひどい場合など。 *頻発する基本単語の発音が完全に間違っている場合などは,準備時間やスピーチの合間などに,やんわりと 指摘してあげることにします
質疑が質問形式でなく,延々とスピーチになっている場合は,“You should ask questions!” などとやんわりと注意。質疑が攻撃的になっている時は,“Both of you, please calm down!”など
4.1.1 スピーチ中の試合指揮を行った場合の試合時間
以上のようなケースで試合指揮をした場合のうち,3.静寂性の確保が問題となり,あるチームがスピーチを妨害された形になる場合には,スピーチ時間計測を一時中断し,場合によっては多少延長してあげる形で,スピーチを妨害された「被害者」に損がでず,できるだけ公平になるように心がけることにします(逆に,スピーチが早すぎるのを注意された場合・質疑の場合などは,自己責任とみなして時間計測上の便宜を図る必要はありません)。
4.1.2 試合指揮の制限
ジャッジがスピーチ中に議論の内容にまで直接踏み込んで発言や質問することや,試合終了前の準備時間などに個々の論点への反論・疑問などを呈示することは,やめてください。
内容が分からない・馬鹿げていると感じる論点は,その場では注意せずに,単に勝敗にカウントされない弱い論点として取り扱う(場合によっては無視する)ことにします。もちろん試合後にこうした論点についてアドバイスすることは,むしろ積極的に行うことにします。
*議論の中身には原則として口を出さないでください。しかし,よい議論についてうなずいてあげたり,ジョークに対して笑ってあげたりすることを,ジャッジが抑制する必要はありません。生徒がジャッジを観るという態度を涵養するためにも,ジャッジは自然な表情で反応をすることにします。
4.2 判定
ジャッジは,試合中に論じられた議論の内容,とりわけ具体的な論点を公平・客観的に比較することで,論題が肯定されたか否定されたかを合理的に判断して,試合の勝敗を判定します。具体的には,論題どおりに政策を採用した場合に得られるAdvantage(利益)が,そのDisadvantage(弊害)より大きいとディベーターの議論によって確信させられたのなら,肯定側の勝ちとします。逆にDAがADを上回ると確信させられたのなら否定側の勝ちとします。
各ジャッジは,それぞれ独立に考え,必ずどちらかのチームに勝ちの投票をします(引き分けはありません)。 *悪い判定の典型例は,「否定側のアタックが素晴らしいと思った。他のスピーチは甲乙つけがたい。だから否定側の勝ち」のようなスピーチを主観的に比較する判定です(部分的にスピーチがどれだけよくても,最終的な結論に説得力がないなら意味は全くないです!)
4.2.1 判定に入れるAdvantage・Disadvantage数の制限
肯定側・否定側ともに,試合において持ち出せるAdvantage・Disadvantageの数は最大で二つとなっています。試合の中で,実質的に,二つを越える数のAdvantage・Disadvantageへの言及がされた場合は,ジャッジは主要と考える二つ以外は無視することにします。
*2.1の「各スピーチの役割と注意事項」を参照してください。
4..2.2 試合の後の方ででた「新しい議論」の取り扱い
ジャッジは勝敗の判定にあたって,ディフェンスや総括など試合の後半で初めて提出された「新しい議論」を,原則として無視するか弱い議論と判断して判定理由にいれないことにします。これは,相手チームからの反論の有無にかかわらないものとします
「新しい議論」に明らかに相当するのは,ディフェンスや総括などで新しいプランやAdvantageやDisadvantageに相当するような議論が出た場合です。総括などで相手チームのAdvantage・Disadvantageの証明に対して,新しいアタックの証拠資料が出た場合もこれに相当します。とりわけ総括など,相手チームには反論の機会が著しく限られている状況で新しい議論が出された場合は,端的に判定理由から除外することにします。
ただし総括などで,双方の議論をより深い角度から比較するような言及や証拠資料がでた場合などは,あくまで正当な比較であるので,新しい議論として軽視すべきではありません。
*2.1の「各スピーチの役割と注意事項」を参照してください。議論のこうした「後出し」を制限するのは,フェア・プレーの精神に違反するだけでなく,議論を効果的にぶつけ合うことを促進するという教育的な観点からしても,できる限り行わないように誘導していくべきです
4.2.3 判定の変更禁止と,抗議への対処
判定は,ジャッジが集計用紙を大会本部に一度提出した後は,変更できません。
試合内容については,原則としてジャッジの判断が最終判断となります。判定内容についてのジャッジへの抗議は,一切禁止されています。
万が一,抗議とおぼしき言動がチームのメンバーや顧問などからあった場合,ジャッジは大会本部に報告することとします。著しい抗議などがあった場合,予選通過資格・ベストディベーター資格の喪失・今後の大会への出場禁止など処罰の対象とします。
*試合後に証拠資料などについて反則行為が判明した場合には,大会の審査委員会の方で勝敗の変更を行うことはありえますが,ジャッジが試合内容を再考した結果の判定変更は認められません
4.2.4 ジャッジの判定の試合の勝敗
ジャッジの多数が勝ちの投票をしたチームがその試合での勝者となります。
試合は,原則として奇数のジャッジで判定は行いますが,万が一,やむを得ない事情で偶数となり,票が同数となった場合は,メイン・ジャッジの投票した側の勝ちと取り扱うことにします。
4.3 コミュニケーション・ポイントの採点
各ジャッジは,各チームに5点満点・最低点1点のコミュニケーション点をつけることにします。(小数点はなし,整数のみ)。コミュニケーション点は,各チームがどれだけ効果的に聴衆・ジャッジとコミュニケーションをとることに成功したかで採点することにします。基準は,反則などの減点がない限り,次のようなスケールで採点することにします。(平均が3となるようにします。5や1は例外的な点数とする)
5 Good
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全てのスピーチが分かりやすい(スピードも適切で,間の取り方なども良い)。かつチームの全員が聴衆とコミュニケーションがとれている(アイコンタクトも適切で,マナーも良い)
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4
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ほとんどのスピーチが分かりやすい。ほとんどのメンバーが聴衆とおおむね良く
コミュニケーションができている
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3Average
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多少の難はあるが,おおむねスピーチもわかりやすく,メンバーの過半が問題ない
コミュニケーションができている
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2
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スピーチが分かりにくくなることが目立ち,コミュニケーションが取れていないことも目立つ
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1 Poor
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スピーチのほとんどが分かりにくく,チームの誰もコミュニケーションを取れていない
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4.3.1 コミュニケーション・ポイントの減点
あるチームの①メンバーの試合態度が悪い(私語・異音で妨害したり,ジャッジの試合指揮に従わない,あまりに大きい声でスピーチ中に助言),②質疑の際に対戦相手へのマナーが悪い,③あまりに質疑に応答しない,④相手側の証拠資料の閲覧に協力しない場合には,ジャッジはその違反のひどさに応じて,適宜コミュニケーション・ポイントを減点するものとします。
減点があった場合でも,最低点が1点を下回ることはないものとします。
付記
2007年12月8日 改定
第一回目の大会ルール(2006年11月30日)からの実質的な変更はありません。分かりやすさのため,1.4を付け加え,4章としてジャッジの項目を独立させました。